新生児から6歳未満の子どもを車に乗せるときには、2000年4月からチャイルドシートの使用が法律で義務づけられています。そのため、ほとんどの場合に産院を退院するときから必要になるので、自家用車を持っておられる方は出産前までには準備しておくことが大切です。
ちなみに、子どもに怪我や障害があるなど、ケースによっては法律が免除されることもありますが、原則として着用しないで子供を乗せた場合には、運転手は交通違反となります。
子どもの安全性を考え、体型にあったものおよび自分たちのライフスタイルに合ったものをしっかり選ぶためのポイントを考えてみました。
チャイルドシートの選び方
ひとくちにチャイルドシートと言っても、お店に行くといろいろな種類のものが陳列されています。
店員さんは丁寧に説明してくれるでしょうが、あらかじめ予備知識を身につけておかないと、よく理解できないこともたくさんあるはずなので、下準備を忘れずにね。
専用タイプか兼用タイプか
チャイルドシートには、乳児期・幼児期・学童期などでお子さんの体の成長に合わせて使い分ける「専用タイプ」と、乳児と幼児あるいは幼児と学童などの長い期間で使える「兼用タイプ」があります。それぞれ長短がありますので、子供の成長を考えながら、自分たちの使いやすいほうを選んでください。
専用タイプ
子どもの年齢・体重・身長にあわせて使い分ける専用タイプは、より安定感があり、体型にぴったりなものが見つかりやすいので子どもの成長にあわせて選ぶことができます。なにより、限られた期間しか使わない分、限られた機能しかないので、兼用タイプより本体が軽く、取り付けも簡単なものが多いです。また、それぞれの価格は、兼用タイプよりも当然安い傾向にあります。成長にあわせて買い替える必要がありますが、持ち運びもしやすい傾向にあり便利です。
もともと、赤ちゃんから幼児、学童までが車に乗るときに着用するカーシートを総称して、「チャイルドシート」と呼んでいますが、チャイルドシートの中には、子供の年齢や体格によって、次の3種類があります。
ベビーシート(乳児用)
年齢:0ヶ月~12ヶ月頃まで
体重:13kg未満
身長:70cm以下
乳児期は首が据わってないため、寝かせるタイプです。
後ろ向きに使用する「シートタイプ」と横向きに使用する「ベットタイプ」とがあります。
ベビーシートを使う赤ちゃんの年齢は、新生児のときから生後12ヶ月の頃まで。ベビーシートの着用に関して厳密な年齢の制限はありませんが、首がすわって、体重が13キロ未満で身長が70センチ頃までが、ベビーシートを使う期間の目安となります。
チャイルドシート(幼児用)
年齢:1歳~4歳頃まで
体重:9kg~18kg
身長:65~100cm
幼児の首が据わり、自身で座れることが使いはじめの目安です。「前向きシート」として使用します。
ジュニアシート(学童用)
年齢:4歳~10歳頃まで
体重:15kg~36kg
身長:135cm以下
ジュニアシートとは車の座席の上に敷いて使うタイプのもので、「座席を上げて背の高さを補う」、「腰ベルトの位置を子供の臀部に合わせる」ことによって大人用の座席ベルトが使えるようにするものです。
背もたれのある「ハイバックタイプ」と座面部分だけの「ブースタータイプ」、およびハイバックタイプながら、背もたれ部分と座面部分が分離できるタイプなどがあります。
車のシートベルトは一般的に身長140センチ以上および12歳以上を基準に設計されているため、子供が6歳を超えても、安全を最優先して、その身長に近づくまではチャイルドシートの着用を続けていきましょう。
兼用タイプ
対象年齢が広い兼用タイプは、成長にあわせて買い替えの必要がなく、長く愛用できるので便利です。
乳児・幼児兼用シートでは、成長にあわせてシートを後ろ向きや前向きに変更でき、幼児・学童兼用シートでは、背もたれやヘッドレストの位置を細かく調整できるのが特徴です。
最近は、新生児~学童期まで、1台のチャイルドシートで全ての期間を使用することが出来るタイプが多く市販されており、経済的です。対象年齢が広いため、兄弟の年齢によっては1つのシートを使いまわすことも可能ですが、専用タイプよりも、重さと単体での価格は上がる傾向にあることも頭に入れておきましょう。
回転式か固定式か
回転式
360度回転する回転式は、ドア側に座面を向けられるため、乗せ降ろしがスムーズで便利です。後向きや前向きなども自由に変えられるため、子どもの様子が確認しやすく、泣いたときには自分のほうに体を向けてあやすことも可能です。また成長にあわせてベッド型やイス型に変えられる回転ベット式もあります。
ただし構造上どうしても本体が重くなってしまいますし、価格も高くなってしまうということが避けられません。
また、どうしても重くなる回転式ですが、「セパレート構造」のものもあり、このタイプならば台座からシートが取り外せるので、その分、軽くて持ち運びがしやすく、取り付けが楽になります。
固定式
回転機能のない固定式は、軽量で持ち運びがしやすく、複数の車に頻繁に付け替えを行うのに便利です。仕組みがシンプルな分、回転式よりも安価なものが多いのが特徴です。向きを変える手間が掛かっても、なるべく初期費用を抑えたいという人に向いています。
車への取付方法は
ISOFIX取付
シートベルトを使わず、チャイルドシートのコネクターを車に搭載された専用金具に差し込んで連結するだけなので、力の弱い人でも取り付けやすく、勝手に外れたり緩んだりする心配もなく、横揺れにも強く、安定感もありますが、ISOFIX(アイソフィックス)対応車以外は取り付け不可です。
2012年7月以降に生産された乗用車には、法律(道路運送車両の保安基準第22条の5第1,2項参照)によって、取付具の装着がすべて義務付けられていますが(二人乗り用自動車等例外が有ります)、それ以前の車種では対応していないことがあるので、購入前にあらかじめ自分の車が対応しているか確認しておきましょう。
また車種によっては固定金具が背もたれと座面の間の奥側に潜り込んでいるために、取り付けが大変な場合もありますので、ISOFIX取付対応車というだけでなく、どんな取付方法を採用しているのかも実車で確認しておくとよいでしょう。
シートベルト取付
車のシートベルトをチャイルドシートに通して固定するタイプなので、車種を選ばず、ほぼ全ての車に取り付けられるのがメリット。ただ、ISOFIX取付式に比べると、装着に時間がかかるのが難点です。
両方で装着可能
複数の車を所有しており、ISOFIX対応じゃない車にも乗せるなら、ISOFIX式とシートベルト式の両方が使えるタイプを選んでおくという選択肢もあります。
Eマークの有無
走行中の事故や衝撃から守るために、国土交通省認定の安全基準には、チャイルドシート先進国のヨーロッパを参考に決められたECE規則が採用されており、「Eマーク」と呼ばれています。
規則には従来の安全基準のR44と、さらに安全性を向上させたR129があるので、出来ればR129の記載があるものを選ぶのが安心ですね。
通販サイトでは型式認定を受けていないものも販売されているそうですが、そのような商品を使用するのは違反となりますので注意してください。なによりも安全性に疑問のある製品を大事な子供に使用するべきではないでしょう。
その他の考慮する機能
素材
赤ちゃんや子どもはたくさん汗をかくので、メッシュなどの通気性のよい素材を選ぶのが良いです。吸水性がよく、速乾性のある素材なら、汗っかきの赤ちゃんでも快適に過ごせます。
カバーが洗濯できるものなら、汗はもちろん、食べこぼしでシートが汚れてもすぐに洗えて便利です。
赤ちゃんの体調はなかなか把握し難いので、走行中に嘔吐することも多々あるので着脱のしやすさも考慮してくださいね。
赤ちゃんの固定方法
5点ハーネス式なら、動き回る赤ちゃんや子どもでもしっかり固定できるのがポイントです。
両肩・両サイドのお腹周り・股下の安全ベルトの5点で拘束できるので、3点式のベルトよりもさらに抜けにくく、じっとしていられない子どもにも重宝します。
現在では市販されているほとんどの種類は5点ハーネス式が使用されているみたいです。
衝撃吸収シート
衝撃吸収シートは、急な衝撃からもしっかり赤ちゃんの頭や体を保護できるので外せない機能の1つ。快適なドライブを楽しむためにも、しっかり赤ちゃんや子どもの身体が守れる機能が備わっているかどうかもチェックしてみてくださいね。
日よけ
日除け対策としてサンシェード付きのものもよく目にしますが、窓外の日差しから、デリケートな赤ちゃんを守ることができます。また、エアコンの風が直接当たるのを和らげてくれる役割もあります。
車への取付位置
チャイルドシートはエアバッグが装備されている場所に設置するのは危険です。
エアバッグは成人の体型を前提に設計されているため、子供にとっては衝撃が強く、膨らんだ際にケガをしてしまう可能性が指摘されています。
そのため、基本的にはエアバッグのない後部座席を選ぶのが望ましく、特に後ろ向きで使う乳児用ベビーシートは非常に危険なので絶対にエアバッグのある助手席で使ってはいけません。
チャイルドシートの使用義務
【道路交通法】
自動車の運転者は、幼児用補助装置(いわゆるチャイルドシート)を使用しない6歳未満の幼児を乗車させて自動車を運転してはいけません。
使用義務を怠って警察の取り締まりを受けた場合は、運転手に対しては罰金や懲役などの刑事罰はありませんが違反点数1点の罰則が科されます。(道路交通法施行令別表2参照)
ちなみに、チャイルドシートの使用を怠る違犯行為の正式名称は『幼児用補助装置使用義務違反』です。
自動車の運転者は、幼児用補助装置(幼児を乗車させる際座席ベルトに代わる機能を果たさせるため座席に固定して用いる補助装置であつて、道路運送車両法第三章及びこれに基づく命令の規定に適合し、かつ、幼児の発育の程度に応じた形状を有するものをいう。以下この項において同じ。)を使用しない幼児を乗車させて自動車を運転してはならない。ただし、疾病のため幼児用補助装置を使用させることが療養上適当でない幼児を乗車させるとき、その他政令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。
【引用】『道路交通法第71条の3第3項』(チャイルドシートの使用義務)
児童(六歳以上十三歳未満の者をいう。以下同じ。)若しくは幼児(六歳未満の者をいう。以下同じ。)を保護する責任のある者は、交通のひんぱんな道路又は踏切若しくはその附近の道路において、児童若しくは幼児に遊戯をさせ、又は自ら若しくはこれに代わる監護者が付き添わないで幼児を歩行させてはならない。
【引用】『道路交通法第14条第3項』(幼児の定義)
チャイルドシートの使用義務の免除
【道路交通法施行令】
6歳未満の幼児でもチャイルドシートを使用できないやむを得ない理由がある場合には使用義務が免除されますが、免除される状況は道路交通法施行令にて、下記のように具体的に定められていますので、個人の考えで判断してはいけません。
1.座席の構造上の問題でチャイルドシートが設置できない場合
2.乗車人数が多くてチャイルドシートを設置できる場所がない場合
3.幼児が怪我をしていたり障害があるためチャイルドシートの着用で悪影響がでる場合
4.肥満や身体的問題の影響でチャイルドシートの着用が難しい場合
5.おむつ交換や授乳などのチャイルドシートを着けたままでは実行不可能な日常生活の世話をするタイミングの場合
6.バスやタクシーを利用する場合
7.道路運送法第78条の2項と3項に該当する自家用運送車に乗せる場合
8.応急で子供をすぐに病院等へ送る必要があるときや、迷子の子供を警察に連れて行く場合
法第七十一条の三第三項ただし書の政令で定めるやむを得ない理由があるときは、次に掲げるとおりとする。1.その構造上幼児用補助装置を固定して用いることができない座席において幼児を乗車させるとき(当該座席以外の座席において当該幼児に幼児用補助装置を使用させることができる場合を除く。)。2.運転者席以外の座席の数以上の数の者を乗車させるため乗車させる幼児の数に等しい数の幼児用補助装置のすべてを固定して用いることができない場合において、当該固定して用いることができない幼児用補助装置の数の幼児を乗車させるとき(法第五十七条第一項本文の規定による乗車人員の制限を超えない場合に限る。)。3.負傷又は障害のため幼児用補助装置を使用させることが療養上又は健康保持上適当でない幼児を乗車させるとき。4.著しく肥満していることその他の身体の状態により適切に幼児用補助装置を使用させることができない幼児を乗車させるとき。5.運転者以外の者が授乳その他の日常生活上の世話(幼児用補助装置を使用させたままでは行うことができないものに限る。)を行つている幼児を乗車させるとき。6.道路運送法第三条第一号に掲げる一般旅客自動車運送事業の用に供される自動車の運転者が当該事業に係る旅客である幼児を乗車させるとき。7.道路運送法第七十八条第二号又は第三号に掲げる場合に該当して人の運送の用に供される自動車(特定の者の需要に応じて運送の用に供されるものを除く。)の運転者が当該運送のため幼児を乗車させるとき。8.応急の救護のため医療機関、官公署その他の場所へ緊急に搬送する必要がある幼児を当該搬送のため乗車させるとき。【引用】『道路交通法施行令第26条の3の2第3項』
自家用自動車(事業用自動車以外の自動車をいう。以下同じ。)は、次に掲げる場合を除き、有償で運送の用に供してはならない。
一 災害のため緊急を要するとき。二 市町村(特別区を含む。)、特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人その他国土交通省令で定める者が、次条の規定により地域住民又は観光旅客その他の当該地域を来訪する者の運送その他の国土交通省令で定める旅客の運送(以下「自家用有償旅客運送」という。)を行うとき。三 公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき。【引用】『道路運送法第78条』