マスクの種類や効果を理解した用途別の選び方

花粉や風邪ウイルスの防止をする日常使用のものから、医療用、粉塵の吸入防止のためのもの、有毒物質から身を守るための特殊性能のものまで、マスクにはその要求性能に合わせてさまざまな製品が存在します。

ここでは、いろいろな種類や形のマスクの特徴とその用途別の効果を見ていきましょう。

家庭用マスク

カゼ、花粉対策や防寒・保湿などの目的で日常に使われるマスクです。素材や形状、サイズなども豊富で、フィルター性能と通気性のバランスがよいため、長時間に渡り、快適に使用できるのも特徴です。

天然繊維・化学繊維の織編物または不織布等を主な本体材料として、口と鼻を覆う形状で、花粉、ホコリなどの粒子が体内に侵入するのを抑制、またかぜなどの咳やクシャミの飛沫が体内外に侵入、飛散するのを抑制することを目的に使用される、医薬品医療機器等法に該当しない衛生用品と定義されています。

フェイスマスク

簡易マスク・衛生マスクとも呼ばれ、我々が日常もっとも多く目にしているマスクです。

防寒・保湿などの目的でも日常的に使われます。

素材や形状、サイズなども豊富で、フィルター性能と通気性のバランスがよいため、長時間に渡り、快適に使用できるのも特徴です。

素材による分類

マスクフィルター部分の素材は、大部分が「ガーゼ」と「不織布」の２種類ですが、最近ではポリウレタン製も少しずつ注目を集めています。

ガーゼ

ガーゼは「家庭用マスク」として古くから使われている素材です。

1948年（昭和23年）ごろガーゼが家庭用マスクに使用され、現在の「平型マスク」が誕生したそうです。

１枚のガーゼを１２枚、１８枚、２４枚、３０枚に折り重ねて出来ています。

天然素材である綿を使っているので保湿性に優れており、喉を乾燥から守ってくれるので、防寒・乾燥対策に適しています。

ただガーゼマスクとして売られている商品でも、不織布（ポリプロピレン等）が入っているものがありますので注意しましょう。

不織布（ふしょくふ）

元々は医療用マスクの素材として一般的だった不織布は2003年（平成15年）ごろから家庭用マスクに使用され、現在のプリーツ型、立体型のマスクが登場してきました。

近年の花粉症流行により急激に普及して、現在市販されているマスクはほとんどがこれに該当するようです。

文字通り「織らない布」で、繊維同士をいろいろな方法で結合させてシート状にしたものをいいます。

繊維が緻密な物から隙間の多いものまで、厚みや柔らかさなどを自在に作れる素材です。

ただ、やはり化繊のためアレルギーのある人には問題があるのが難点ですね。

ポリウレタン

エバーマスクと呼ばれ、顔の凸凹に密着するため防塵力に優れ、布製のマスクに比べ呼吸がしやすく、メガネ着用時にメガネが曇りにくいという特徴を持っているので、元々は医療現場や食品工場などで使用されていました。

また、柔らかく伸縮性があり、洗って繰り返し使用できる（推奨は3回程度らしいですが）ので、最近では花粉症対策用のマスクとして注目されてきました。

形状による分類

鼻と口を覆うタイプの簡単な構造をしていることが一般的で、いろいろな形状があります。

平型

ガーゼタイプの主流である平面的なタイプです。

プリーツ型

不織布タイプの主流であり、１層から複数層の平板の素材をプリーツ構造にして、上下に開いて装着します。

口元広々、呼吸もラクラクの使用感が得られます。

立体型

鼻と口の形状に沿うように立体裁断されており、より密着性が高いです。

カップ型

鼻と口を覆うドーム型のカップをあてるタイプです。

唇がマスクに触れにくい成形タイプなので、会話がラクに行えます。

本来は防塵マスクや医療用マスクに採用されている形状です。

活性炭入り

防臭・微粒子吸着効果のある活性炭をマスク内部に練り込んだものです。

防臭効果により臭いの発生する作業に効果的です。

近年の家庭用マスク

元々の家庭用マスクの基本的機能とは保湿・保温機能（気管・気管支の乾燥を防ぎ、絨毛運動を活発化させ、異物を排出する機能を高める）と防寒機能（日本人は、昔から体験的にマスクを活用していた）でしたが、
近年は風邪・ウイルスや花粉そしてＰＭ２．５といろいろな対策のための機能を持った高機能なマスクが市販されている家庭用マスクのほとんどを占めるようになってきました。

皆さんがよく目にする、サージカルマスク、Ｎ９５マスクなどの高機能マスクは本来は後述する医療用マスクや防塵マスクに分類されるマスクですが、今では家庭用マスクに種類別されるほどになってきました。

医療用マスク

主に医療現場もしくは医療用に使用される感染防止用マスクで、外科手術などの際に使われます。“外科の”“手術の”という意味から「サージカル(surgical)マスク」とも呼ばれています。

日本には医療用マスクの性能規格基準が存在しません。しかし、医療現場では湿性生体物質などの液体防御性能がない製品は役割を果たしません。

米国ではASTM（米国材料試験協会）が医療用マスクの素材条件を定めているため、それをマスク選択の参考にしています。

サージカルマスク

サージとは手術や処置などの医療行為を指し、本来はそのときに用いる医療用（病気予防用）マスクをサージカルマスクと呼んでいましたが、現在では風邪や花粉症の患者が用いる一般向けマスクもほとんどがサージカルマスクと同等になっています。

一般にマスクと言った場合、最近では、このタイプの衛生用マスクを指すことが多いのですが、
医療現場における定義では下記のような米国材料試験協会規格に準拠したもの（外科手術などの際に使われるので外科用マスクともいわれる）が使用されます。

米国材料試験協会の医療用マスク規格（ASTM F2100-11）は下記のとおりです。

特性	レベル１低バリア	レベル２中バリア	レベル３高バリア
細菌濾過効率	≧95％	≧98％	≧98％
微粒子濾過効率	≧95％	≧98％	≧98％
空気交換圧単位：mmH₂O/cm²	＜4.0	＜5.0	＜5.0
血液不浸透性単位：mmHg	80	120	160
延燃性	Class１	Class１	Class１

表中のマスクの性能指標

細菌濾過（捕集）効率（％）

ＢＦＥ（Bacterial Filtration Efficiency）
ブドウ状球菌の粒子（平均粒子径3.0±0.3µm）をどれくらいカットできるかを示した数値
マスクによって細菌を含む粒子が除去され、患者への飛沫を防ぐ割合（％）

数値が高い方が性能が良く、医療用マスクでは、95％以上の性能が求められます。

微粒子濾過（捕集）効率（％）

ＰＦＥ（Particle Filtration Efficiency）
個数基準中央径平均約0.1µmのポリエチレン製ラテックス球状粒子をどれくらいカットできるかを示した数値
マスクによって試験粒子が除去され、装着者へ影響が出ない割合（%）

数値が高い方が性能が高いことになります。

空気交換圧（mmH₂O/cm² ）

△P（Air Exchange Pressure）
呼吸のしやすさを示します。
一定流量の空気をマスクに通して、マスクの前側と後側の圧力差を示します。
数値が低い方が、空気の流れる抵抗が少なく、呼吸がし易いことになります。
高いろ過効率と低い呼気抵抗を両立させる事が、高性能マスクの条件と言えます。

血液不浸透性（mmHg）

FR（Fluid Resistant）
液体（血液）が飛散した場合、どの程度の圧力にまで耐えうるかを示します。
血圧（80,120,160mmHg）に相当する圧力で合成血液をマスクに当て、マスク内側成血液の浸透の有無を肉眼で確認します。

延燃性

電気メスを使用する手術室などにおいて、炎の広がりにくさを示します。
クラス1～3まで3段階に分かれ、数値が小さいほど燃えにくいことを表します。

その他のマスクの性能指標

ウイルス飛沫濾過（捕集）効率

ＶＦＥ（Viral Filtration Efficiency）
φX174と呼ばれるウイルス（粒子径0.1～5.0µm）の粒子をどれぐらいカットできるかを示した数値

Ｎ９５マスク

Ｎ９５マスクとは、米国労働安全衛生研究所の規格が定めた9種類の基準の中で最も低いＮ９５を満たした高性能のマスクを指します。

０．３μmの微粒子を９５％以上捕集する性能を備えているため、結核やＳＡＲＳ、ＰＭ２．５、また放射性物質からの防御に効果があるとされるマスクです。

「ＰＭ２．５」とは大気中を浮遊する粒子径２．５μm以下で、吸い込むと肺の奥まで入りやすく、肺がんやぜんそくを引き起こす危険性がある微小粒子物質です。

Ｎ９５マスクもその規格基準は、本来は使い捨て式防塵マスクに分類されるものです。

日本の厚生労働省国家検定規格（後述）では、DS2区分マスクがN95マスクに相当する能力を持ちます。

Ｎ９５規格
呼吸器防護具の規格基準であり、Ｎはnot resistant to oil （耐油性なし）を表しています。
９５とは塩化ナトリウム（空力学的質量径0.3μm）の捕集効率試験で95％以上捕集することを意味しています。
【米国労働安全衛生研究所（NIOSH）呼吸器防護具規格】

	捕集率 95％	捕集率 99％	捕集率 99.97％
Ｎ	N95	N99	N100
Ｒ	R95	R99	R100
Ｐ	P95	P99	P100

N：Not resistant to oil（耐油性なし）
R：Resistant to oil（耐油性あり）
P：Oil Proof（防油性あり）
N95/R95/P95：0.1～0.3μmの微粒子を95%以上除去できる
N99/R99/P99：0.1～0.3μmの微粒子を99%以上除去できる
N100/R100/P100：0.1～0.3μmの微粒子を99.97%以上除去できる

産業用マスク

主に工場などで作業時の防塵対策として使用されるマスクです。工業用マスクや防塵マスクとも呼ばれ、粉塵の量や性質により口や鼻だけを覆うもののほかに顔面すべてを覆うものもあります。

家庭用マスクや医療用マスクとは違い、産業用マスクには国家検定規格が存在しますので、国家検定に合格したものを選ぶ必要があります。

防塵マスク

工事現場や各種製造現場などにおいて粒子状物質の吸入防止のために着用するのが防塵マスクです。

防塵マスクは、使い捨て式と取り替え式の2タイプに大別できます。

使い捨て式は、濾過材と面体部分が一体型となった簡易式のタイプで、一回きりの使用で使い捨てるものです。

一方取り替え式は、何度も使用する面体部分と、取り替えできるカートリッジの形となった濾過材を組み合わせるタイプとなります。

防塵マスクの規格は、D、R、S、Lの4つのアルファベットを用いて表しますが、
Dは使い捨て式、
Rは取り替え式、
Sは塩化ナトリウム（NaCl)0.06～0.10μmの固体粒子、
Lはフタル酸ジオクチル（DOP)0.15～0.25μmの液体粒子
のことです。
また、アルファベットの末尾に1～3の数字が付いており、数字が大きいほど捕集性能が高いことを意味します。
たとえば、DS3という規格のマスクは、使い捨て式で、固体の試験粒子を99.9%以上捕集することができるマスクです。

厚生労働省国家検定規格

規格	DS1 DL1 RS1 RL1	DS2 DL2 RS2 RL2	DS3 DL3 RS3 RL3
試験粒子捕集率	80.0%以上	95.0%以上	99.9%以上
用途	機械の組み立て、木材の切削加工、部品の清掃、はつり作業、研磨など	溶接作業、金属加工など	ｱｽﾍﾞｽﾄ作業、ﾀﾞｲｵｷｼﾝ作業、放射線物質汚染区域での作業など